3. こころとからだにやさしい木の住まいのお話し

日本では古来より木造住宅に住んできました。このことは、日本人が持つ繊細な感性と無縁ではありません。互換で感じることの出来る木の良さが世界に誇る独特な文化を築き上げてきた一因でもあるのです。

夏涼しく、冬暖かく

木の柱を触ってみると、夏はやや冷たく、冬は暖かみがあって、何とも言えない心地よさを感じることができます。金属やコンクリート、タイルなどではこういう体験はできません。これは木材の熱伝導率の低さを表しています。木の熱伝導率は、なんと鉄の五百分の一、そしてコンクリートの十分の一。とても熱を伝えにくい性質を持っています。そのため、たとえば熱い味噌汁が入った木のお椀でも、手にとって美味しく飲むことができるわけです。

また、多孔性素材である木は、その無数の微小空間の中に熱伝導率がゼロに近い空気をたくさん封じ込めています。もともと熱を伝えにくい木の中に、さらに熱を伝えにくい構造を持っています。 触ったときに、金属やコンクリートのように“ひやっ”としないのは、木が手の熱を奪わないからなのです。水との親和性が高く、周辺の温度にしたがつて水分を維持しようと細胞膜が働きます。これにより膨張、収縮をしながら温度調整をして一定に保っていきます。

床材料の違いによる足の甲の温度変化
温度変化グラフ
室温18度 木材(ナラ) ビニールタイル コンクリート
0分経過 28℃ 27℃ 26℃
60分経過 26℃ 21℃ 19℃

( 資料:山本孝 他「木材工業」Vol.22-1.P24.1967 )

湿気を吸ったり、はいたり

特に、木は吸湿・放湿性に富んだ材料で、湿度が高くなると湿気を吸収し、湿度が低くなると湿気を放出して、周りの湿度が一定になるように自動調節する能力をもっています。主な成分であるセルロースやヘミセルロースの中に、水分子を引き寄せる部分(水酸基)があり、この部分に水がくっついたり離れたりすることで、木材に調湿機能を有します。つまり木材には、周りの温湿度に応じて、ある決まった量の水分を取り込む性質があるのです。このため、木材を内装にたくさん使うと、部屋の中の湿度の変動は少なくなり、快適に生活することができるのです。


一般に、室内の10.5cm角のスギの柱(約3m)には、ビールの大瓶に換算して約2.5本分の水分が入っているといわれています。そのうち、0.5〜1本分の水分が出たり入ったりして、室内の湿度を調整してくれます。
しかし木の調湿機能の原理は除湿器や加湿器のそれとは異なります。 除湿器は空気中の湿気を冷却して水にして排水するのでモーターが回っている限り除湿しますが、木は内部に水分を蓄えるので湿度に応じた含水率(平衡含水率)に達すると吸湿は止まります。
つまり数時間から一日単位の湿度の変化には対応しても梅雨時のように長期間にわたる高湿度や冬の乾燥時の低湿度を調整するわけではありません。木の内装は湿度の上下の起伏をなだらかにすることで、人の身体が湿度の変化に適応する過程をよりスムーズにしてくれるとお考えください。木の家は自前で天然のエアコンの機能をすでに備えているともいえるのです。

<さらにこんな効果も>

鉄筋コンクリート製の校舎と、木造校舎を比較した場合、流行期のインフルエンザによる学級閉鎖の割合は、木造校舎の方が3分の1以下だったそうです。これも、木のもつ調湿効果がウイルス抑制に役立った結果といえるでしょう。やはり木は人にやさしい素材なんですね。

※参考:「木造校舎の教育環境〜校舎建築材料が子ども・教師・教育活動に及ぼす影響」(財)日本住宅・木材技術センター刊

いつも清潔な室内環境

近年,問題となっている気管支ぜん息やアトピー性皮膚炎などアレルギーの大きな原因の一つにダニがあげられています。特に,気管支ぜん息の50%〜90%は室内のダニが原因と言われています。
防ダニ対策にも木材の使用が有効です。木が放出する「アルカロイド」という成分には、ダニ、カビ、雑菌の繁殖を防ぐ働きがあります。木の精油には強い抗菌・殺菌作用があります。特にヒノキチオールは細菌(MRSA)にすぐれた効果が立証されています。ですから、床をカーペットからフローリングに替えるだけで、ぜん息やアレルギー性皮膚炎などの原因となるダニが減少します。



経過時間と動かないダニの割合のグラフ グラフの凡例

ヒバやヒノキの薄板を畳に挟み込むと、その香り物質によってハウスダストマイト(ヤケヒョウダニ)の行動が抑制されます。
その効果は半年から1年持続します。

左のグラフは、ヒバや桧の薄板を畳に挟みこんだ状態で、動かなくなったダニの割合を時間ごとに表したものです。
5日を経過すると90%以上のダニが動かなくなるという実験結果がでています。


目にやさしい

目には反射率50〜60%の光が最も心地よいとされています。この反射率にとても近いのが木材です。人工的な素材は均一の色で均一の反射をしますが、木材の微妙な模様や色、 凹凸は、光の反射を様々に変化させます。より自然な光が感じら目れるのはこのためです。
また、木は人間に有害な波長の短い紫外線を吸収する性質を持っています。木が反射する光がまぶしすぎず、 目にやさしいのは、紫外線をほとんど反射しないためです。


「ゆらぎ」という言葉をご存じでしょうか。平均値は一定でも、瞬間的にその平均値の近くで変動している現象、または平均値からのズレのことをいい、音、風、光、波など自然界のすべてのものが持っています。
私たちが不快に感じる音や形には「ゆらぎ」がでたらめに起こる一方、心地よく感じるものには、ある程度の規則性をもった「ゆらぎ」が認められます。「1/fのゆらぎ」と呼ばれているのです。木の年輪も等間隔に見えて実はズレがあり、基本的に1/fのゆらぎになっています。その年輪が材の面に木目となってあらわれ、木目の間隔と流れが1/fのゆらぎをもたらし、視覚を通して人の感覚を心地よく刺激します。

音をまろやかにするはたらき

木は音を伝えにくい性質を持っています。さらに高い音を適度に吸収してソフトな音にしてくれます。コンクリートなどのようにいつまでも不快な残響音を残すことなく、敏感な耳からくるイライラを和らげてくれます。これは、楽器やスピーカーの枠などに材料として使われていたり、コンサートホールで多用されていることからもおわかりいただけるでしょう。また、人間の耳には聞こえない樹木や自然界が発する超高周波音(都会では少ない)を通し、五感の心地よい感覚を育ててくれたりもします。


心が落ち着き安心する効果

森の中にはいると清々しく、精神的な安らぎを得られたような気分になります。これは「森林浴効果」と呼ばれるもので、木の持つフィトンチッドという物質がもたらしたものなのです。
また、森林には、動物の死骸や落ち葉などの堆積物があるにもかかわらず、悪臭を感じさせないのは、フィトンチッドの持つ抗菌性や消臭効果や浄化能力によるものだとわかってきました。木材を多用して建築された家や無垢の木製品などから漂う快い芳香物質がそれに当たり、リフレッシュ効果やストレスの解消を心身にもたらすことにも加えて、防虫効果や殺菌効果、悪臭除去効果などが様々な実験効果からも明らかにされてきました。
学校の校舎では、木造、もしくは木で内装しているほうが、疲れにくく、校内暴力も起こりにくいというデータもあります。木とつきあうことで、人や物にやさしく接する習慣が身につき、あたたかな気持ちが育っていくのです。

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